先生の言う事

ドラマーかたぎり聡が座っている。

ドラムレッスンを受ける上で、先生(僕)の言う事は話半分に聞くくらいでちょうどいいんじゃないかというお話です。

自分で考える

僕はドラムを高校から始めたので、かれこれ20年以上はドラムを続けていることになります。自分で書いておいて、そんなに経ったのか….と少し驚いています。継続は力なりと言うけど年数分の力はついたんだろうか….と物思いに耽っていたら、5分経ってました。続けます。

その20数年の間にはライブもしましたが、それ以上に練習は色々しました。先輩から教わったことであったり、教則本から学んだことであったり、ライブを観て盗んだ技術であったり。内容は多岐に渡りますが、共通して大事だったのは「そこから先は自分で考える」という事にあったように思います。

思わず太字にしてしまいましたが、そこまで大層な話ではないです。誰かから練習のやり方やフレーズを教えてもらったら、そこにプラスしてちょっと違うパターンも自分で考えようという程度の話です。ここでほんだしを入れます、とレシピには書いてあるけど鶏がらスープにしてみようとか、そんな感じです。そうやって考える癖を持ってると、いろんなレシピが蓄積されていきます。

例えば8分音符を練習するとします。

1小節に8分音符が8個並んでいる譜面

シンプルな8分音符が続いています。タカタカタカタカ……….。これを使ってどんなレシピがあるのか?という事を考えてみます。

まずはテンポ。テンポはBPMという数字で表されますが、BPM100で練習したらそれを110にする。さらに120、130、140と上げていく。限界まで上げたら今度は90、80、70と落としていく。数字は10刻みでもいいし、もっと細かく5刻みにも1刻みにも出来ます。僕は油断してると大体10刻みです。キリがいいので。

次に手順があります。普通はR(右)・L(左)・R(右)・L(左)と交互に叩きますが、L・R・L・Rと順番を逆にしてみる。またはRだけ・Lだけなど片手だけにしてみる。両手同時に叩いてみる。その他にも、RRLLやRLRRなど手順は何種類も考えられます。こういった手順はルーディメンツとも呼ばれています。

音量もあります。ダイナミクスとも言われますが、音量の小さい方から記号で書くとp (ピアノ)〜mp (メゾピアノ)〜mf(メゾフォルテ)〜f (フォルテ)があります。pp (ピアニッシモ)やff (フォルティッシモ)もあります。調べたらppp (ピアニッシシモ)やfff (フォルティッシッシモ)もありました。なぜfffだけ「ッ」の数が一つ多いのかは気になりますが、記号化したら4〜8段階のダイナミクスがあることになりますね。それぞれの音量で段階的に練習する。さらに言えば、mf (小)・mf (大)など各記号にダイナミクスをつける考え方も出来るので、音量変化も何段階でも細かくできます。

またアクセントもあります。右手だけアクセントを付ける、左手だけ付ける、ランダムに付ける…etc。

他にも口でカウントを歌いながらやったり、メトロノームを裏拍で鳴らしながらやったり、音源に合わせてやったり….これらの組み合わせまで含めたら本当にキリがありません。まあシンプルな8分音符でも、考え出せば色々なアプローチで練習出来るということは伝わったのではないかと思います。

繋げていく

もちろん初心者の時点で、こんなに色んなレシピを考えだす事は難しいです。色んな事を教わったり身につけていく過程で、ちょっとずつその引き出しが増えていく感じです。
なので、ここまで書いて冒頭の一文を覆しますが、初心者の方は先生の言うことを聞いたほうがいいと思います。基本的に先生は「こっちに進むといいよ」という道案内をしてくれているので、右も左も分からない内は従った方が効率的に進みます。ただ、その間も1%くらい「こっちに進むとどうなるかな?」と言う事を考えるようにした方が良いかなと。興味と言ってもいいかもしれませんが、その方がより楽しく進めるかなと。いつの間にか喩えが料理から道に変わっていました。


やっぱり人に教えてもらう事より、自分で発見したり気づいたりする事の方が、身に付くし何より嬉しいです。仮にそれが大した内容じゃなかったとしても、その発見した喜びだったり気づきを得る快感みたいなものは、自分の頭で考えていないとなかなか出会えないように思います。でも、じゃあどういう風に考えたらいいの?という方もいらっしゃるかと思います。そういう時は前に学んだことを思い出して、今と繋げてみると良いと思います。

今練習しているビートに前教えてもらったフレーズを入れたらどうなるかな?とか、今練習してる曲に前やった曲の弾き方したらどうなるかな?とか、この練習とあの練習を組み合わせたらどうなるかな?とか、そんな感じです。

僕の場合で言いますね。専門的な言葉を使いますが、ジャズ研でシンバルレガートに合わせてスネアとバスドラで3連符を刻むフレーズを教えてもらった時に、このスネアとバスドラをパラディドルの手順にしたら面白いかもと思って練習した結果、3連符の4つ割り(フレーズのサイクルで言えば8つ割り)という、かなり変なリズムになりました。
まあ実際の演奏に使う事はありませんでしたが、実用性は抜きにしてこういう寄り道は楽しいものです。そしてきっと何かの肥やしになっているはずです。これは希望的観測です。

表題に戻りますが、先生の言うことを100で受けいれる事は、思考停止にもなりうるなと思ったりするわけです。先生からすれば言う事を聞いてくれるのは有り難いですが。先生の案内に従って進みながらも、自分が思いついた道も進んでみるバランス感覚は大事かなと。漫画「バガボンド」でこんなセリフがあります。

迷い 間違い 回り道もする それでええ 振り返って御覧
あっちにぶつかり こっちにぶつかり 迷いに迷ったそなたの道は きっと誰よりも広がっている


喩えを料理から道にして良かった。

先生も生徒も同じ

先生側の話もしますと、楽器の先生は生徒と比べたらその楽器についての技術や知識に長けています。ただ、だからといって「正解を知っている」わけではありません。思わず太字にしてしまいました。
楽器の先生は、先生でもありますが同時にプレイヤーでもあります。プレイヤーという立場になってしまえば、もう生徒の方と同じです。日々の練習なり経験なりで、技術も知識も熟練していくことでしょう。という事は、楽器や演奏に対する考え方・捉え方も変化していきます。

僕は昔、脱力に凝っていた時期がありまして、とにかくいかに力を抜いて演奏するかを重視していました。その時期に誰かにレッスンをしていたとしたら、きっと脱力の重要性を説いていたことでしょう。今はどうかと言えば、あまり力を抜くと言う事を意識しすぎない方が良いと思っているので、レッスンでも脱力という言葉はそんなに使いません。その変化の詳細については長くなるので割愛しますが、今と数年前とではかなり考え方は違いますね。
こういった変化はプレイヤーとしては自然な事ですし、今が正解というわけでもありません。超一流レベルまで極めた人なら分かるのかもしれませんが、残念ながら僕は凡人ですし….まだまだ悟りは開けそうにありません。今後も考えが変化する可能性はあります。もちろん、コロコロ意見が変わるとかそういう事ではありませんよ。

話半分から八分くらいで

レッスンの時は、生徒の方にとってその時最良だと思う道を案内しています。が、しかし、先生の言う事を鵜呑みにするだけでなく、自分で考える余地もある方が健全かなと思います。ちょっと嫌な言い方をすれば疑ってみる事も大事なんじゃないかと。そしてそのちょうど良いバランスが話半分というところなんじゃないかと。いや、半分聞き流されると思うとそれはそれで寂しいので、話八分くらいでどうでしょう。

そしてこのタイミングで書くのもどうかと思いますが、ドラムレッスンやってますのでお気軽にお問合せください。

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